債務整理を相談しようと調べ始めると、弁護士事務所と司法書士事務所の両方が出てきます。どちらも「債務整理に対応」と書いてあり、司法書士のほうが費用は安めに見える。では、どちらに頼めばいいのか。
この判断には、明確な基準があります。1社あたりの借入額が140万円を超えるかどうかです。この金額を境に、司法書士にできることが法律で制限されるからです。この記事では、その「140万円の壁」の意味と、自分がどちらを選ぶべきかの判断方法を解説します。
当サイト管理人は、5社合計約430万円の借金を32歳のときに任意整理で整理した経験者です。私の場合、1社の借入が140万円を超えていたため、弁護士に依頼しました。この記事は、そのときの選択過程と公的機関の情報にもとづいて書いています。
この記事でわかること
・「140万円の壁」の正確な意味(総額ではなく1社あたり)
・手続き別にできること・できないこと
・費用の差はどれくらいか
・自分がどちらを選ぶべきかの判断フロー
・途中で金額が判明した場合にどうなるか
結論|判断基準は「1社あたり140万円」
認定司法書士が債務整理で代理人になれるのは、債権者1社あたりの請求額が140万円以下の案件に限られます。これを超える場合、司法書士は代理人として交渉することができません。
弁護士にはこの制限がなく、金額にかかわらずすべての手続きに対応できます。
「総額140万円」ではない
ここは誤解が非常に多い点です。判断は総額ではなく、債権者ごとの金額で行われます。
たとえば、5社から合計430万円を借りていても、1社あたりが50万〜100万円であれば、司法書士でも対応できます。逆に、総額200万円でも、そのうち1社から150万円借りていれば、その1社については司法書士は代理できません。
「認定」司法書士に限られる
もうひとつの前提として、債務整理を扱えるのは法務大臣の認定を受けた認定司法書士だけです。すべての司法書士ができるわけではありません。相談先を選ぶ際は、認定司法書士かどうかを確認してください。
手続き別|できること・できないこと
任意整理
司法書士:1社140万円以下なら代理可能。弁護士:金額制限なし。
任意整理は債権者ごとの交渉なので、140万円を超える1社だけ弁護士に依頼し、他社は司法書士に、という分け方も理論上は可能ですが、実務では煩雑になるため一本化するのが一般的です(任意整理とはの記事)。
個人再生
司法書士:代理人にはなれず、書類作成の支援にとどまります。裁判所とのやり取りや再生計画の交渉は、本人が行うことになります。弁護士:代理人として全面的に対応。
個人再生は手続きが複雑で、再生計画案の作成や債権者との調整が必要なため、実務上は弁護士への依頼が推奨されます(個人再生とはの記事)。
自己破産
司法書士:こちらも書類作成の支援にとどまります。管財事件になった場合の破産管財人とのやり取りや、免責審尋への同席はできません。弁護士:代理人として全面的に対応。
また、弁護士がついている場合に「少額管財」として予納金が抑えられる運用がある裁判所もあり、結果的に総費用が変わる可能性もあります(自己破産の費用の記事)。
過払い金請求
司法書士:1社140万円以下。弁護士:制限なし。
取引期間が10年以上に及ぶ場合、過払い金が140万円を超えることは十分にあり得ます。この場合、途中で弁護士に引き継ぐ必要が生じます(過払い金の依頼先の選び方の記事)。
訴訟を起こされている場合
債権者から訴訟を提起されている、支払督促が届いているといった状況では、訴額が140万円を超えると司法書士は代理できません。緊急性が高い場面でもあるため、弁護士への相談が確実です(支払督促の記事)。
費用の差はどれくらいか
一般に、司法書士のほうが費用設定はやや低めの傾向があります。任意整理であれば、1社あたりで数千円〜1万円程度の差が生じることもあります。
ただし、事務所ごとの差のほうが、資格の違いによる差より大きいのが実情です。「司法書士だから安い」と決めつけず、複数の事務所で総額の見積もりを取って比較するのが確実です(債務整理の費用相場の記事)。
判断フロー|3つの質問で決まる
質問1|1社でも140万円を超える借入があるか
ある → 弁護士。この時点で結論が出ます。司法書士では対応できません。
質問2|個人再生・自己破産の可能性があるか
ある → 弁護士。書類作成支援だけでは、裁判所とのやり取りを自分で行うことになります。総額が大きく任意整理では返せない見込みなら、最初から弁護士を選ぶほうが確実です(3手続きの使い分けの記事)。
質問3|訴訟や支払督促を起こされているか
起こされている → 弁護士。訴額によって司法書士の対応範囲が制限されるうえ、対応期限が短いため、確実性を優先すべき場面です。
すべて「いいえ」なら
1社あたり140万円以下で、任意整理で解決でき、訴訟も起こされていない。この場合は、司法書士も有力な選択肢になります。費用を抑えられる可能性があるため、両方で見積もりを取って比較してください。
途中で140万円超が判明したらどうなるか
実務で起こりうる事態です。依頼時は残高が不明で、取引履歴を取り寄せたら1社140万円を超えていた、というケースです。
この場合、その債権者については司法書士が代理を続けられないため、弁護士へ引き継ぐことになります。手続きが一時的に止まり、費用も二重にかかる可能性があります。
これを避けるには、相談時に「1社あたりの最大額はいくらか」を確認することです。おおよその見当がつかない場合は、信用情報の開示で確認してから依頼先を決めるという方法もあります(開示請求のやり方の記事)。
相談前に確認しておくべきこと
依頼先選びで無駄な手戻りを防ぐために、相談前に次の3点を整理しておくと有効です。
1|借入先ごとの金額をメモする
総額ではなく、「A社80万円、B社150万円」というように債権者ごとに書き出します。この一覧が、そのまま依頼先の判断材料になります。残高が曖昧なら、督促状や利用明細、カードの利用可能枠から推測しておくだけでも構いません。
2|利息を含めると超える可能性を意識する
140万円の判断は、一般に利息や遅延損害金を含めた請求額で行われるとされています。元金が130万円台でも、滞納期間が長ければ超える可能性があります。境界線上にある場合は、弁護士を選んでおくほうが安全です。
3|自分がどの手続きになりそうかを想定する
総額÷60を毎月払えそうなら任意整理、払えないなら個人再生・自己破産の可能性があります。後者の可能性があるなら、代理人になれる弁護士を選んでおくと、方針変更時の引き継ぎを避けられます(判断フローチャートの記事)。
それでも司法書士を選ぶ場面はある
ここまで弁護士が有利な場面を並べましたが、司法書士が適している状況も明確にあります。
①1社あたりの借入が確実に140万円以下で、②任意整理で解決できる見込みがあり、③訴訟を起こされていない場合です。この条件下では、費用を抑えつつ同等の結果を得られる可能性があります。
また、地域によっては司法書士事務所のほうが身近で相談しやすいという事情もあります。「資格の格」で選ぶのではなく、自分の案件が対応範囲に収まるかで判断してください。
140万円はどう数えるのか|判断が分かれる論点
「1社あたり140万円」という基準は明快に見えますが、実務では数え方に注意が必要です。
総額ではなく、1社あたりで見る
最も基本的な点です。5社合計で500万円あっても、1社あたりが140万円以下なら認定司法書士でも対応できます。逆に、1社だけで150万円あれば、その1社については弁護士でなければ代理できません。
過払い金の場合は「戻る金額」で見る
過払い金の返還請求では、請求する金額が基準になります。引き直し計算の結果、140万円を超える過払い金が判明した場合、その案件は認定司法書士の範囲を超えます。
問題は、計算するまで金額がわからない点です。取引期間が長い案件では、調査の途中で範囲を超えることが判明する可能性があります。
利息・遅延損害金の扱い
元金だけでなく、利息や遅延損害金を含めた金額で判断されるという考え方があります。元金が130万円でも、遅延損害金を加えると140万円を超えるケースが生じ得ます。
この点は解釈が分かれ得る領域のため、140万円に近い金額の場合は、最初から弁護士を選ぶほうが安全です。
途中で140万円超が判明した場合に何が起きるか
依頼した後に範囲を超えることが判明すると、実務上の負担が生じます。
①その案件について、司法書士は代理を続けられません。弁護士への引き継ぎが必要になります。
②費用が二重に発生する可能性があります。司法書士へ支払った分と、弁護士への費用の両方がかかる場合があります。
③時間の損失が生じます。引き継ぎの過程で、手続きが数週間〜数ヶ月遅れることがあります。
この事態を避けるため、依頼前に「140万円を超えた場合はどうなりますか」と必ず確認してください。誠実な事務所であれば、その可能性と対応方針を説明します。
手続き別に見た、実務上の使い分け
任意整理
1社あたり140万円以下であれば、認定司法書士でも弁護士と同じ交渉ができます。費用は司法書士のほうが安い傾向にあり、この条件を満たすなら合理的な選択になります。
個人再生
司法書士は書類作成の支援はできますが、代理人にはなれません。本人申立ての形になるため、裁判所とのやり取りを自分で行う場面が生じます。
また、代理人がいないことで個人再生委員が選任され、報酬15〜25万円程度が加算される可能性が高まります。司法書士の報酬が安くても、総額では逆転することがあります。
自己破産
個人再生と同様、司法書士は書類作成のみです。免責審尋への同行や、管財人との対応を代理してもらうことはできません。
過払い金請求
140万円以下なら司法書士でも対応可能です。ただし前述のとおり、計算するまで金額が確定しない点に注意が必要です。
費用差をどう評価するか
司法書士のほうが安い傾向にあるのは事実ですが、総額で比較してください。
任意整理(3社・各100万円):司法書士なら弁護士より数万円安く済む場合があります。この条件では、費用差がそのまま利益になります。
個人再生:司法書士の報酬が安くても、再生委員報酬が加わると総額で高くなる可能性があります。必ず「総額でいくらか」を確認してください。
140万円に近い案件:引き継ぎのリスクを考えると、費用差以上の損失が生じ得ます。最初から弁護士を選ぶほうが結果的に安く済むことがあります。
私の場合|1社が140万円を超えていた
私が債務整理を検討したとき、総額は約430万円、内訳はクレジットカード3枚(リボ計約180万円)とカードローン2社(計約250万円)でした。
相談の際、専門家から最初に確認されたのが、「1社あたりの最大額はいくらですか」という質問でした。当時の私は、この質問の意味がわかりませんでした。総額しか意識していなかったからです。
調べてみると、カードローン2社のうち1社が140万円を超えていました。その時点で、司法書士という選択肢は自動的に消えました。もし費用の安さだけを見て司法書士に依頼していたら、途中で引き継ぎが必要になり、時間も費用も余計にかかっていたはずです。
いま振り返ると、この確認を最初にしてくれた専門家は誠実だったと思います。「うちで全部やります」と言うこともできたはずの場面で、まず対応範囲の前提を確かめた。依頼先選びで見るべきは、できることを大きく見せる姿勢ではなく、できないことを最初に明示する姿勢なのだと感じました。
相談へ行く前に、自分の借入の内訳(どこからいくら)をメモしておくことをおすすめします。総額だけでなく、1社ごとの金額。この数字が、依頼先を決める最初の分岐点になります。
ケーススタディ|選択が分かれた実例
ケース1|1社140万円超で弁護士を選んだケース
総額300万円のうち、1社が160万円だったケース。司法書士では対応できないため、最初から弁護士に依頼。全社を一括で任意整理し、手続きもスムーズに進みました。
ケース2|全社140万円以下で司法書士を選んだケース
3社から合計210万円(各70万円程度)を借りていたケース。すべて140万円以下だったため司法書士に依頼し、弁護士に頼む場合より費用を抑えられました。
ケース3|途中で引き継ぎが必要になったケース
残高が曖昧なまま司法書士に依頼したところ、取引履歴の取り寄せで1社が150万円と判明。弁護士への引き継ぎが必要になり、手続きが1ヶ月ほど遅れました。事前確認の重要性を示す例です。
ケース4|自己破産のため弁護士に切り替えたケース
当初は任意整理を前提に司法書士へ相談したものの、収入から返済が困難と判明し、自己破産へ方針変更。代理人として対応できる弁護士に依頼し直しました。
弁護士と司法書士に関するよくある質問
140万円は元金だけの金額ですか
一般に、利息や遅延損害金を含めた請求額で判断されるとされています。元金が140万円以下でも、利息を含めると超える可能性があるため、境界線上のケースでは弁護士を選ぶほうが安全です。
司法書士に依頼すると不利になりますか
対応範囲内の案件であれば、結果に大きな差が出ることは通常ありません。判断すべきは資格の優劣ではなく、自分の案件が範囲内かどうかです。
複数の債権者で、一部だけ140万円を超える場合は
その1社については司法書士が代理できません。実務上は煩雑さを避けるため、全体を弁護士に依頼するのが一般的です。
司法書士でも督促は止まりますか
止まります。認定司法書士が受任通知を発送すれば、貸金業法の規制により取り立ては停止します(受任通知の記事)。
費用はどれくらい違いますか
司法書士のほうがやや低めの傾向がありますが、事務所間の差のほうが大きいのが実情です。総額の見積もりで比較してください。
認定司法書士かどうか、どう確認しますか
事務所のウェブサイトに記載があるほか、相談時に直接尋ねても構いません。「簡裁訴訟代理等関係業務の認定を受けているか」が正式な確認事項です。
相談だけならどちらでもいいですか
初回相談の段階で対応範囲を確認できるため、どちらに相談しても構いません。ただし、範囲外だと判明すれば依頼先を変える必要が生じます。
まとめ:総額ではなく「1社あたり140万円」で判断する
債務整理の依頼先を選ぶ基準は明快です。1社あたりの請求額が140万円を超えるなら弁護士、超えないなら司法書士も選択肢になります。この判断は総額ではなく債権者ごとの金額で行われるため、まず自分の借入の内訳を確認してください。
加えて、個人再生・自己破産の可能性がある場合、訴訟や支払督促を起こされている場合も、代理権の範囲から弁護士が確実です。司法書士はこれらの手続きで書類作成の支援はできますが、代理人にはなれません。
費用は司法書士のほうがやや低めの傾向がありますが、事務所ごとの差のほうが大きいため、資格だけで決めず総額の見積もりで比較してください。
私自身、1社が140万円を超えていたため弁護士を選びました。相談の冒頭でこの前提を確認してくれた専門家の姿勢は、いま振り返っても誠実だったと思います。できないことを最初に明示してくれるかどうかも、依頼先を見極める材料になります。
次に読むべき記事を案内します。相談の実際→無料相談の完全ガイド。事務所の選び方→事務所の選び方の記事。費用の相場→債務整理の費用相場の記事。相談先の種類→相談先の種類の記事。手続きの選び方→選び方まとめの記事。
この記事を書いた人
当サイト管理人。20代でリボ払いとカードローンにより約430万円の借金を抱え、32歳で任意整理を選択。月々約13万円だった返済を約7.2万円に組み直し、5年で完済した経験を持つ会社員です。体験と公的機関の情報にもとづいて当サイトを運営しています。テーマの性質上、プライバシー保護のため匿名で運営しています。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言や特定の事務所・サービスの勧誘を行うものではありません。代理権の範囲や費用は個別のケース・事務所によって異なり、記載の内容は最終更新日時点の一般的な目安です。実際の依頼先の判断は、弁護士・司法書士などの専門家、または法テラス等の公的窓口にご相談ください。

