【体験記2】督促の電話が怖くて眠れなかった日々

この記事は、当サイト管理人が30歳前後に経験した、督促の電話に怯えていた時期の記録です。

先に書いておくと、私は差し押さえまでは至っていません。裁判所からの書類も届いていません。滞納も、数日から1週間程度の遅れが数回あった程度です。

それでも、あの時期の記憶は、金額の話よりもはっきり残っています。着信音への反応、封筒を開けられない感覚、眠れない夜。この記事では、それを書きます。

そして、私が恐れていたことの大半は、実際には起きませんでした。なぜ起きなかったのか、何を誤解していたのかも、あわせて書きます。

この記事の内容

・最初の督促が来た日

・着信音に体が反応するようになる

・封筒を開けられなくなる

・想像していた最悪の事態

・実際には何が起きたか

最初の督促は、SMSだった

初めて督促を受けたのは、引き落としに数日遅れたときでした。

スマートフォンにメッセージが届きました。内容は、支払いが確認できないという案内と、連絡を求めるものだったと思います。文面は事務的で、脅すような表現は一切ありませんでした。

それでも、心臓が跳ねました。「ついに来た」という感覚です。

このときは、翌日に入金して解決しました。数日の遅れだったので、大きな問題にはなりませんでした。

ただ、この日を境に、私の中で何かが変わりました。

着信音に体が反応するようになる

それから数ヶ月のうちに、支払いの遅れが何度か発生しました。そのたびに、電話がかかってくるようになりました。

回数としては、多くありません。月に数回、日中の時間帯です。深夜や早朝にかかってきたことは一度もありませんでした。

それでも、スマートフォンが鳴るたびに、体が反応するようになりました。

知らない番号からの着信が表示されると、画面を見ただけで動悸がしました。友人からの電話でも、鳴った瞬間は同じ反応が起きます。

そのうち、着信音を切りました。マナーモードにして、画面を伏せて置くようになりました。

いま思えば、これは典型的な悪手でした。連絡が取れないほど、督促の頻度は上がります。そして私は、その理由を理解していませんでした。

電話に出られなかった理由

なぜ出なかったのか。自分でも整理できていませんでしたが、いま振り返ると3つあったと思います。

①怒られると思っていた。電話に出れば、責められると想像していました。

②説明できることがなかった。「いつ払えるか」と聞かれても、答えられる状況ではありませんでした。答えを持っていないから、出られない。

③出れば現実になると感じていた。これが一番大きかったかもしれません。会話をしなければ、まだ何も起きていないことにできるという感覚です。

もちろん、これは錯覚です。出ようと出まいと、事態は進行していました。

封筒を開けられなくなる

電話と並行して、郵便物も届くようになりました。

最初のうちは開けていました。しかし、内容が支払いの案内だと分かってからは、封を開けずに置いておくようになりました。

机の隅に、開けていない封筒が数通たまっていた時期があります。見えるところにあるのに、手が伸びない。そういう状態でした。

後に相談へ行ったとき、専門家に言われたことがあります。

「郵便物は、必ず開けてください。特に裁判所からのものは、期限が書いてあります」

幸い、私のところに裁判所からの書類は届いていませんでした。もし届いていて、それを開けずにいたら、期限を過ぎていた可能性があります。

支払督促には、受け取りから2週間という期限があります。開封したかどうかに関係なく、期限は進みます。この事実を、当時の私は知りませんでした。

眠れなかった夜のこと

この時期、寝つきが悪くなりました。

布団に入ってから、頭の中で計算が始まります。来月の支払い、口座の残高、給料日までの日数。答えの出ない計算を、繰り返していました。

朝方に眠って、寝不足のまま出勤する日が続きました。仕事の集中力も落ちていたと思います。

いま振り返って思うのは、この状態が続けば、いずれ収入そのものに影響していたということです。実際、体調を崩して仕事を離れる人もいると聞きます。

私は、そこまで至る前に相談へ行きました。ぎりぎりのところだったと思います。

一度だけ、電話に出た日のこと

ずっと避けていた電話に、一度だけ出たことがあります。

特別な決意があったわけではありません。たまたま手に持っているときに鳴って、反射的に応答してしまっただけでした。

実際の会話

相手は、社名と担当者名を名乗りました。そして、本人確認をされました。生年月日を聞かれたと思います。

その後の内容は、「支払いが確認できていないこと」の確認と、「いつ入金できるか」という質問でした。

私は、正直に「今月は厳しい」と答えました。すると、「では、いつ頃なら可能ですか」と聞かれました。

給料日を伝えると、それで会話は終わりました。時間にして、3分もかかっていません。

起きなかったこと

責められませんでした。声を荒げられることも、皮肉を言われることもありませんでした。

「なぜ払えないのか」という理由を、詳しく問い詰められることもありませんでした。相手が確認したかったのは、入金の見込みだけだったのです。

それでも、また出なくなった

ここが、いま振り返って不思議な部分です。実際に出てみて何も起きなかったのに、私はまた電話を避けるようになりました。

理由を考えると、「次は違うかもしれない」という感覚だったと思います。今回はたまたま穏やかな担当者だっただけで、次は違うのではないか、と。

いま分かるのは、それが根拠のない想像だったということです。穏当な対応は、担当者の人柄ではなく、法律で定められたルールの結果でした。

記録を取っておけばよかった

もうひとつ、後悔していることがあります。督促の記録を、何も残していませんでした。

残しておくべきだったもの

①着信の日時と回数。スマートフォンの履歴で足ります。②相手の会社名と担当者名。③言われた内容の要点。④届いた郵便物。封筒ごと保管。

なぜ必要だったか

ひとつは、ルール違反があった場合の証拠になるからです。私の場合は問題のある対応を受けませんでしたが、もし受けていたら、記録がなければ何も申し出られませんでした。

もうひとつは、相談時に状況を正確に伝えられることです。私は相談の場で「どこから、どのくらいの頻度で連絡が来ていますか」と聞かれ、曖昧にしか答えられませんでした。

特に郵便物は、開封せずに捨ててしまっていたものもありました。いま思えば、そこに重要な情報が書かれていた可能性があります。

怖くて開けられない場合の折衷案

当時の私に言うとすれば、「開けなくていいから、捨てずに全部取っておけ」ということです。

開封する勇気が出なくても、保管さえしておけば、相談のときに専門家に見てもらえます。実際、相談では「届いている書類を全部お持ちください」と言われました。

私が想像していた「最悪の事態」

あの時期、私が恐れていたことを列挙します。いま読み返すと、その多くが事実に反しています。

①勤務先に電話がかかってくる。会社の人に知られ、居づらくなる。

②自宅に取り立てが来る。ドアを叩かれ、近所に知られる。

③家族に連絡が行く。親に借金の存在が伝わる。

④玄関に貼り紙をされる。近隣に知られる。

⑤深夜に電話が鳴り続ける。

これらのイメージが、頭の中で繰り返し再生されていました。そして、そのどれも実際には起きませんでした。

実際には、何が起きたか

7年間を通じて、実際に起きたことを書きます。

①電話は、日中の時間帯にかかってきた。月に数回程度です。深夜や早朝は一度もありませんでした。

②文面も口調も、事務的だった。脅されたことは一度もありません。

③自宅に人が来たことはない。

④勤務先への連絡もなかった。

⑤家族への連絡もなかった。

⑥貼り紙などは一切なかった。

つまり、私が恐れていた事態は、ひとつも起きていません。

なぜ起きなかったのか

後に知ったことですが、これには明確な理由がありました。

取り立てのルールが法律で定められている

貸金業法により、正規の登録業者には守るべきルールがあります。

①午後9時から午前8時までの電話・訪問は、正当な理由がない限り禁止。私のところに深夜の電話が来なかったのは、偶然ではありませんでした。

②債務者以外に借入の事実を明らかにすることの禁止。玄関の貼り紙や、近隣への通知が行われないのは、このためです。

③正当な理由なく勤務先へ連絡することの禁止。職場への電話が来なかったのも、これによります。

④脅迫的な言動や、私生活・業務の平穏を害する行為の禁止。

つまり、私が恐れていたことの大半は、そもそも法律で禁じられていたのです(取り立てのルールの記事)。

私が見ていたのは、闇金のイメージだった

では、なぜあれほど恐れていたのか。

いま思えば、ドラマや漫画で見た「取り立て」のイメージが頭にありました。強面の人が押しかけてくる、あの絵です。

しかし、それは闇金など違法な業者の描写です。私が借りていたのは、すべて正規の登録業者でした。法律に従って営業している相手だったのです。

ただし、放置は別の問題を生む

誤解のないように書いておきます。取り立てが穏当であることと、放置してよいことは別です。

滞納を続ければ、督促は法的手続きへと進みます。支払督促や訴訟を経て、給与や口座の差し押さえに至る可能性があります。

そして、給与を差し押さえられれば、裁判所から勤務先へ通知が届きます。私が最も恐れていた「会社に知られる」という事態は、督促によってではなく、放置の結果として起こるものでした(差し押さえの記事)。

順序が、逆だったのです。

電話に出ないほうが、危険だった

もうひとつ、後になって知った事実があります。

勤務先への連絡は原則禁止されていますが、「本人と連絡が取れない」場合には、例外的に認められる余地があります。

つまり、私が電話に出ないことで、職場に連絡が行く可能性を自分で高めていたということです。

一度でも応答して、「いま払えないが、いつなら払える」「連絡はこの番号にしてほしい」と伝えておけば、その必要は生じなかったはずでした。

私が恐れていた事態を招きかねない行動を、恐れているがゆえに取っていた。この構造に気づいたのは、すべてが終わった後でした。

督促が止まった日

32歳で相談へ行き、任意整理を依頼しました。

契約から数日後、受任通知が各社に発送されました。これは、弁護士が介入したことを債権者に知らせる書面です。

そして、督促は止まりました。

貸金業法により、受任通知を受けた債権者は、原則として本人への直接の請求ができなくなります。交渉によって止めてもらったのではなく、法律による効果です(受任通知の記事)。

電話が鳴らなくなった最初の週のことを、いまでも覚えています。

スマートフォンが鳴っても、体が反応しない。それが、どれほど久しぶりの感覚だったか。

金額はまだ430万円のままでした。何も返していません。それでも、あの週の解放感は、返済期間を通じて最も大きなものでした。

いま、督促に怯えている方へ

当時の自分に伝えたいことを書きます。

1|恐れていることの大半は、法律で禁じられている

深夜の電話、自宅への押しかけ、近隣への通知、勤務先への連絡。これらは正規の業者には認められていません。

まず、相手が正規の登録業者かを確認してください。金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べられます。

2|電話に出ないことは、対策にならない

むしろ、勤務先への連絡を招きかねません。一度応答して、状況と連絡方法を伝えるほうが安全です。

3|郵便物は必ず開ける

裁判所からの書類には期限があります。支払督促は2週間。開封していなくても、期限は進みます。

4|督促を止める方法は、ひとつだけある

専門家に依頼して、受任通知を送ってもらうことです。これは法律による効果であり、どの事務所に依頼しても同じように生じます。

5|止まるまでの時間は、思うより短い

相談から契約、受任通知の発送まで、早ければ1週間程度です。数年間怯えていたものが、それで止まります。

止まった後に気づいた、消耗の総量

督促が止まってから、しばらくして気づいたことがあります。

眠れるようになった

受任通知が出てから数週間で、寝つきが戻りました。頭の中で計算が始まらなくなったからです。

返済額が減ったわけではありません。その時点ではまだ、和解も成立していませんでした。変わったのは、電話が鳴らないという一点だけです。

仕事の集中力が戻った

それまで、日中も着信を気にしていました。スマートフォンが視界に入るたびに、意識がそちらへ向いていたのです。

それがなくなって初めて、どれだけの注意力を奪われていたかを認識しました。

「怯えている」という自覚がなかった

最も意外だったのは、これです。

督促を受けている最中、私は自分が怯えているとは思っていませんでした。その状態が日常になっていたため、比較対象がなかったのです。

止まって初めて、それまでが異常な状態だったと分かりました。渦中にいると、自分の消耗の度合いは測れません。

だから、早く止めてほしい

この記事で最も伝えたいのは、この部分かもしれません。

督促に怯えている期間は、金額の問題とは別に、それ自体が生活の質を確実に削っています。そして、渦中にいる本人には、その総量が見えません。

止める方法は、法律上の効果として存在します。相談から1週間程度で止まります。

あの時期に失ったもの

最後に、正直に書いておきます。

督促に怯えていた期間、私が失ったのはお金だけではありませんでした。睡眠、集中力、そして日常のあらゆる場面での落ち着きです。

友人と会っていても、頭の片隅で計算していました。休日も、心から休めていませんでした。

そして何より、この状態が「自分の落ち度による当然の報い」だと思っていました。だから、誰にも言えませんでした。

いま分かるのは、それが間違いだったということです。制度は、こういう状況にある人のために用意されています。使うことに、後ろめたさを感じる必要はありませんでした。

次の記事では、初めて相談に行った日のことを書きます。1年近く迷った末に、電話をかけた日のことです。

次に読むべき記事を案内します。この続き→【体験記3】はじめて無料相談に行った日のこと。前の記事→【体験記1】リボ払いが430万円に膨らむまで。取り立てのルール→取り立てのルールの記事。督促を止める方法→受任通知の記事。督促を無視すると→督促を無視するとの記事

いま督促を受けている方は、借金の悩みを今日軽くする最初の一歩もあわせてお読みください。

この記事を書いた人

当サイト管理人。20代でリボ払いとカードローンにより約430万円の借金を抱え、32歳で任意整理を選択。月々約13万円だった返済を約7.2万円に組み直し、5年で完済した経験を持つ会社員です。体験と公的機関の情報にもとづいて当サイトを運営しています。テーマの性質上、プライバシー保護のため匿名で運営しています。

参考にした公的機関・関係団体

本記事の制度に関する記述は、次の公的機関・関係団体が公表する情報を参照しています。最新の内容は各サイトでご確認ください。日本貸金業協会 金融庁 国民生活センター 日本司法支援センター 法テラス

免責事項

本記事は当サイト管理人の個人的な体験を記したものであり、法的助言を行うものではありません。取り立てに関する規制の適用は、相手が貸金業の登録を受けた業者であるかによって異なります。違法な取り立てや闇金による被害を受けている場合は、警察(#9110)、消費生活センター(188)、または闇金対応を行う弁護士・司法書士にご相談ください。個別の判断は、必ず専門家または法テラス等の公的窓口にご相談ください。